先日、取り扱いのお酒の銘柄が少し変わりました。
その中で「農口尚彦研究所」が良いスタートを切っています。
何となく想像はしていました。
以前からリストに載せようと思っていたのですが、中々仕入れが安定出来そうもなかったので見送っていたのですが、自分たちでオンライン販売しだしたので購入しました。
さて、この農口尚彦さん。
いったい誰なんでしょう。
日本酒を作るには遥か昔から「杜氏」(とうじ)という専門家が製造を担っておりました。
大工の「棟梁」、料理では「親方」、「シェフ」です。
仕事があれば日本全国の酒蔵に出張します。
杜氏は酒造りのすべての責任者です。
仕入れ、原価計算、スタッフの募集、製造管理、その他もろもろ全て任されます。
酒蔵はお酒のイメージを伝えて製造は任せる。
酒造りには口を出さない。
そのような関係がずっと続いていたんですね。
杜氏にも組合のようなものがあります。
杜氏技術者集団です、
これは日本中の各地方にあります。
そうです、今震災で大変な地域の能登を拠点とした集団です。
北陸の酒蔵はほぼ、この集団に頼んでいます。
この集団の中の伝説級の職人の一人が農口尚彦さん。
「菊姫」を全国区にのし上げた人物。
長年の功績で受勲し、NHKでも特集されたほど。
ちなみに現在リストにある、「黒龍」の黒龍酒造、佐々木酒造の「古都」も能登杜氏作品。
しかし、時代とともに日本酒の販売量は減り、
なおかつ、地方でも農業や漁業だけでも食べていけるようになり、
わざわざ半年くらい住み込みで飛び回る杜氏のような仕事は人材不足になってしまいました。昔は大金を手に出来たようですけど。
また現代の酒蔵では跡取りが大学などで醸造学を学び、自分で作るようになりました。
オーナーシェフのような。
そして「獺祭」の旭酒造は全てコンピューターで数値化し杜氏がいなくなりました。
そんな中、農口さんは引退と復活を繰り返していましたが、半隠居生活。
多分、本人は引退のつもりでも周りが放してくれなかったんでしょう。
そして、野口尚彦完全オリジナルの酒蔵をスタート。
現代の若者(外国人含む)に酒造りを伝授したく、清潔な工場、洗練された社員寮、
働き方改革、完璧な福利厚生、20代のみ採用、など全てにおいて酒造りの未来を見据えたものです。
そして完成した「日本酒の神様」がつくる酒。
たぶん、これが最後の杜氏としての仕事場でしょう。
敬意を表してリストに載せました。
だいぶ前の記事ですが
日本酒の未来。名工が紡ぐ懐かしき未来の味──石川県・農口尚彦研究所探訪記 | GQ JAPAN